エネルギーコース授業の一コマ …R5.02.06更新

 本エネルギーコースでは、いろいろあるエネルギーの中でも特に、電気エネルギーに関する幅広い学問:

電力送配電・制御・電気機器・放電などの
「強電分野」

半導体・電子回路・増幅回路・通信技術などの
「弱電分野」

コンピュータ・ソフトウェア・プログラミングなどの
「情報処理分野」

を総合的に学びます。電気に関する工学 ― 発電所から無線情報通信まで ― を網羅します (コース名だけは授業内容が分かりにくいですよね)。
 本ページでは、コース各学年(5年4年3年、2年)で学ぶ授業や実験を紹介します。


目次

・6年(専攻科1年)   通信

・5年   (電力)放電
           (電力)照明
           制御
           通信
           電子&通信
           回路設計(電子) (その1)
           回路設計(電子) (その2)

・4年   電機(前期)
           制御
           電子(前期)
           電子(後期) 
           基礎理論

・3年   制御
           情報
           基礎理論

・2年   基礎理論


[6年] [電子&通信分野]:6年生(専攻科1年)では、5年生で行ったインピーダンス整合をさらに深めていきます。スミスチャートを含む高周波回路理論を学び、ネットワークアナライザを使ったMHz帯のインピーダンス整合を実習します。任意定数のLCRテスト回路のインピーダンス整合を、マッチングボックス(Matching Box, M/B)回路で調整しながら、どのチームが一番早く整合できるか、楽しく競争します。

M/Bの可変定数をセラミックドライバで調整しながら、ノートPCに映し出されたスミスチャート等のグラフでインピーダンスの変化を確認しています。
PC画面です。左上はスミスチャート、右上はVSWR、左下はLogMag、右下は位相と周波数の関係のグラフです。LogMagのグラフで下に鋭く凹んでいるところが整合周波数です。
スミスチャートは、回路のインピーダンスとその軌跡を半径1の円上の点の動きとして表示できます。左から右への変化は抵抗R、時計回りは誘導性リアクタンスX (インダクタ)、反時計回りは容量性リアクタンス-X (キャパシタ)の動きを表します。スミスチャートを使うと、煩雑な計算を経ることなく、ゲーム感覚でインピーダンス整合を行うことができます。中心Oの位置がインピーダンス整合点を示していますので、M/Bの定数を調整しながらOへ表示点を移動させていきます。

 さらに後半では、導波管を用いた電磁波(電波)伝送実習も行ってます。電波は障害物がなければ四方八方に広がるので、ある特定の離れた場所に電波信号を送るためは、電波が飛ぶ方向を規制しなければなりません。放送局内におけるアンテナまでの信号伝送などでは、大電力を送らなければなりません。ケーブルでの大電力伝送は、信号が大き過ぎてケーブルが燃えたりしますので、導波管を使って方向を規制しながら、管内の空間すなわち空気中を伝送させます。

GHz帯の電磁波(電波)伝送、特に大電力での伝送には導波管を用います。写真下に写っている直方体は、方形導波管一式(同軸変換器、ストレート導波管2つ、可変ダミーロード)です。この特性を右端に写っているネットワークアナライザを使って、ノートPC制御で評価しています。
ボルトを外して導波管の組み合わせを変えています。
可変ダミーロードの位置を調整すると、ある周波数で整合します。少し見にくいですが、ノートPC画面には(左上) スミスチャート、(右上) VSWR、(左下) LogMag、(右下) 位相のグラフが表示されています。
方形導波管内伝送の基本モードであるTE10モードの説明です。電磁波は、方形導波管の中を斜め方向に壁に反射しながら進んでいきます。
TE10モードでは、導波管の軸と電磁波の進む軸がずれています。そのため、電磁波は壁に反射しながら進んでいきます。

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[5年] [電力分野(放電)]:高電圧発生装置を用いた放電実験を行います。

高電圧実験では,高電圧を印加して気中放電や人口雷の実験を行います。手前の学生の1名は制御盤を操作,ほかの2名は実験データを記録しています。奥にいる学生は高電圧を測定するための標準球ギャップを調整するため接地しているところです。
中央付近の向かい合った2つの球が標準球ギャップです。球ギャップの間で火花放電が起こることで印加した高電圧の値を調べていきます。
人口雷の発生装置です。いろいろなサンプルの絶縁破壊試験(放電する電圧を調べる試験)を行います。
高電圧印加による沿面放電の様子です。ガラスの表面に沿って放電が発生していることが分かります。

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[5年] [電力分野(照明)]:電力の応用分野の実験として各種照明器具の効率試験を行います。

ここ数年で照明器具の主力となってきたLED照明について実験します。写真は,LED照明器具を点灯させて消費電力や効率などを測定している様子です。
道路の照明などで使用されるナトリウムランプも実験対象です。写真は,高圧ナトリウムランプが点灯している様子です。通常の照明とは違った温かい雰囲気の発色ですね。

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[5年] [制御分野]:制御分野の実験では,物の動かし方に関する実験を行います。

制御の基本である状態を保持する実験です。
たとえば,自動車の速度を一定にしておきたい等です。
ここでは,保持してほしい状態を変更したときに,どのように変化していくか実験しています。
音の高音域を抑える等の操作をするものをフィルタと言います。
ここでは,各種フィルタにより,高音域・中音域・低音域がどのように変更できるかを実験しています。

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[5年] [通信分野]:2-4年生の間で学ぶ電気磁気学では、Maxwell方程式の理解を目指します。Maxwell方程式から電磁波(電波)というものが理論的に導き出され、テレビ/ラジオ/携帯電話/無線LANなど今日の無線通信工学があります。というわけで、通信分野は5年生になって登場します。

校舎の屋上で、アンテナの指向性(どの向きの電波をよく受信するか)に関する実験を行っています。地上波テレビジョン放送の受信に使われている「八木-宇田アンテナ」の準備をしています。ちょっと曇っている日ですね。
測定器を用いて、アンテナの向きを変えながら電波の強度を調べているところです。送信所に対してアンテナの向きを変えることで、受信感度が変化します。
上の実験をアニメで表すと、人間の目には見えませんが、こんな感じです。テレビ局からの送信波も電磁波です。電磁波は、互いに直交する電界(E)と磁界(B)からできています。EからBに向けて親指以外の4本指を握る方向にとると、親指の方向(k)に電磁波は進み(右ネジの法則、つまり”C’mon!!”のサインですね)、観測者(八木⁃宇田アンテナ)に向かってきます。
地上に対する電界面を垂直とするか水平とするかで、電磁波(電波)を2種類に作り分けることができます。それぞれ、「垂直偏波」と「水平偏波」と言います。通常の電磁波は様々な角度の電界面が混在しています。直交する垂直偏波と水平偏波はお互いに干渉しません。地上波TV放送では主に水平偏波が使われていますが、山などの障害があって局所的に電波を強めたい場合などに、垂直偏波が別途送信されます。八木⁃宇田アンテナの建て方で、どちらの偏波を受信しているかが分かります。
衛星通信を用いる衛星放送では、衛星の地上に対する位置を固定できませんので、垂直/水平偏波を使うことができません。そこで、衛星から出る電界を右回りにするか左回りにするかで作り分けます。それぞれ衛星から見た立場で、「左旋円偏波」および「右旋円偏波」と言います。受信者から見ると、逆回りとなります。

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[5年] [電子&通信分野]:テレビ動画などの情報を電波に乗せて各地へ無線送信したり、またそれを家庭で受信してテレビに映して楽しむには、情報を電波に乗せる作業(変調)と下ろす作業(復調)が必要です。下の写真は、トランジスタを用いた変調&復調回路の動作実験をしているところです。

音声の変調/復調回路の実験をしているところです。音声を電気信号に変えて電波として送るために必要な電子回路が変調回路で、その逆が復調回路です。手前にある変調回路で変換した電気信号の波形をオシロスコープで観測しています。

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[5年] [電子分野(回路設計) (その1)]:電子分野では、最後の5年生で電子回路の設計&作製実習を行います。これまでの高専生活で学んできた知識を基にして、現実の回路を最初の設計段階から考えていきます。一般的な設計のノウハウと作る装置の概要は示しますが、どう作り上げていくかは学生皆さん次第です。前半戦のテーマは、「無安定マルチバイブレータ」です。ノルマはただ一つ、「世の中に出して、お客様がお金を出して買って下さる」装置を作ることです。電子分野の集大成です。

ブレッドボード上に無安定マルチバイブレータ回路を作り込んで、オシロスコープで動作確認をしているところです。(※オシロスコープが写っていなくて、ごめんなさい・・・)。
別の角度からは、こんな感じです。
ブレットボードで完成させた回路を、ユニバーサル基板に移植していきます。実体配線図を考えて、小さくて効率的な配線になるように努めていきます。分布定数回路への変化や寄生成分の影響など、実際の回路設計は、紙の図面だけでは分からない難しさがあります。
半田付けしていきます。腕の見せ所です。
担当教員が昔、趣味でつくったものです。無安定マルチバイブレータは、直流電圧だけで矩形(くけい)波信号を発生させることができます。設計を工夫することで、発振周波数やデューティー比(ON/OFF時間の比)を調整することができます。出力信号を右側のオシロスコープ(こちらは市販品)に繋いで、時間変化を詳しく見ています。緑(ON信号で点灯)/赤(OFF信号で点灯)/黄(どちらかを保持で点灯)ランプの速さとバランスが変えられるのが分かるかと思います。(※ファイルサイズを軽くするために、1.5倍速にしています。)

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[5年] [電子分野(回路設計) (その2)]:5年生での回路設計&作製実習の後半戦は、インピーダンス整合回路に挑戦します。世の中のあらゆる高周波回路(アンテナ、テレビ、無線LAN、携帯電話などなど)には、インピーダンス整合回路は必要不可欠です。この回路設計理論は、電気電子工学を学んできたEコース学生さん達が正に本領を発揮するところです。数値計算を行って適切なコイルを自作して、回路を作っていきます。実習は音声波長域で行い、スピーカーから出る音の変化を観測していきます。

コイルを使ってインピーダンス整合回路(左下)を組み上げます。ファンクションジェネレーター(右)から音声波長域の正弦波信号を回路に入力し、スピーカーから出る音の変化を聞き、その波形をオシロスコープ(左)で観測します。
作製したコイルをLCRメーターで評価し、必要な回路定数を算出します。
技術職員さんお手製のコイル巻き機(自転車のペダルみたいなもの)を使って、銅線を巻いてコイル(ソレノイドコイル、左)を作っていきます。回転軸右側に押しつけたデジタルカウンタで巻き数をカウントしています。それにしても、有明高専の技術職員さん達の技術力の高さには脱帽です。

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[4年] [電機分野(前期)]:変圧器(Transformer)に関する実験を行います。

電気機器分野に関する実験として,4年生の前期に,変圧器に関する実験を5項目行います。変圧器(トランス)は交流電圧を上げたり(昇圧),下げたり(降圧)するための電気機器です。発電所から電気を送る際には,送電損失を減らすために非常に高い電圧(例えば50万ボルト)で送電されます。一方,私たちの家庭では使いやすい低い電圧(100V や 200V)で受け取っています。このような電気の流れ(送電・配電)の中で,電圧の昇圧降圧をするために変圧器が利用されています。写真は乾式タイプの変圧器です。
写真は変圧器の特性試験(実負荷試験)を行っている様子です。デジタルパワーメータで各値を読み取り,電圧変動率を求めます。

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[4年3年] [制御分野]:シーケンス制御の基礎と応用の実験を行います。3年生では,シーケンス制御の基礎を学習し,4年生ではPC上でラダープログラムを作成し,実際の制御対象(模擬実験装置)の制御を行っています。

スイッチ・センサ等を駆使して,思い通りの制御を実現するための基礎を学びます。PCでラダープログラムを作成するために,PLC(プログラマブルロジックコントローラ)の基礎も学びます。
模擬踏切装置を使用した実験の様子です。普通電車・特急電車の制御,踏切信号の制御,駅の通過処理などをラダープログラムで実現します。
模擬エレベータを使用した実験の様子です。リフトの上下移動,扉の開閉,階数表示ランプなど,制御する要素が複数あるのがエレベータの特徴です(制御が難しい!)。

他にも,模擬実験装置として,交差点信号機があります。
シーケンス制御は,学生に人気がある実験の1つです。

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[4年] [電子分野 (前期)]:弱電分野の一つである電子分野では、コンピュータなどの電子機器の基本回路となる電子回路を学びます。

 前期では、トランジスタ増幅回路の特性評価実験を行います。トランジスタの基礎特性や、これを用いた増幅回路の設計ならびに周波数特性を学びます。

オシロスコープを使って、トランジスタ高周波増幅回路に特徴的に表れるリサジュー図形というものを観測しています。リサジュー図形は入力信号と出力信号の関係を示しています。不思議な形をしていますね。
リサジュー図形を理論的に解析しています。難しいので、真剣な表情です。
リサジュー図形は、入力信号をx軸に出力信号をy軸に取ったものです。入力信号を交流信号(sin 波)とします。出力信号が入力信号よりも時間的に遅れている(位相差で表現します)と、リサジュー図形はこの動画のように変化します。面白いですね。
今度は、出力信号の周波数が入力信号のものよりも大きくなったときのリサジュー図形の変化です。出力信号が歪んだりすると表れてきます。とても複雑に変化して、摩訶不思議ですね。
おまけに、位相差と周波数比を色々組み合わせてみました。
トランジスタ増幅回路では、出力信号の位相が入力信号に対してずれる他に、波形が歪んできます。中央のオシロスコープの画面では、黄色で示している入力信号に対して、ピンク色の出力信号が歪んで全く違う形状となっていることが分かります。この歪んだ出力を右のスペクトラムアナライザでフーリエ変換表示して、その仕組みを理解していきます。
シミュレーションも行います。世の中では複雑な回路設計をする場合、工数・工程などのコスト削減のため、製作前にPC上でシミュレーションを行い、事前の動作確認をします。その後、実際にその回路を組んでいきます。実験では、シミュレーションと実際の製作回路が示す結果との関係を学んでいきます。写真は、ブレッドボード上に実際に組んでいる様子です。

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[4年] [電子分野 (後期)]:4年生後期の電子分野では、具体的な回路の動作を理解します。下の写真は、CR発振回路の特性をリサジュー図形を観測して評価しているところです。

前期と同様にリサジュー図形を計測して、CR発振回路の位相変化を調べているところです。前期で学んでいるので、慣れたものです。

 オペアンプ回路の特性評価をします。下の写真は反転増幅回路の周波数特性を調べているところです。各ポイントでの波形をオシロスコープで観測しています。

オペアンプによる反転増幅回路を調べています。少し見にくいですが、中央のオシロスコープ画面内一番上の黄色波形が入力信号で、一番下が出力です。右上のファンクションジェネレータからの入力信号が100 kHzの正弦波となっています。周波数が高いと、オペアンプ回路内の信号処理が追いつかず、出力信号が歪んで三角波になっているのがわかります。

 ICを用いてデジタル論理回路を作製し、その評価を行います。

ブレットボード上にデジタル論理回路を作製し、その特性を評価しています。実際に配線して、回路を組んでいくので、楽しそうです。

 レーザーを使って、フォトカプラの実験をしています。ある回路から別の回路へ電気絶縁をしつつ信号や情報のみを伝達したい場合、交流の場合はトランス、直流の場合はフォトカプラを使います。昔で例えると、狼煙(のろし)みたいなものです。なおレーザー光は目に悪いので、専用のサングラスをしています。怪しい人達ではありません。

レーザー光(赤色)の強度を、光量計で測定しています。

 発振回路の仕組みを学ぶ実験です。ノートPC上ソフトに表示されているオーディオアナライザ (スペクトラムアナライザ)により分析された周波数ピークを見ながら、発振信号の状態を調整しているところです。

様々な装置を用いて実験しています。

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[4年3年2年] [基礎理論]:2年後期のコース配属開始から4年前期までの2年間で、電気磁気学(電磁気学)を勉強します。エネルギーコースで勉強する「すべて」の電気磁気現象は、電気磁気学で理論的に説明することができます。電気・磁気現象をまとめると、最終的にMaxwell方程式となります。Maxwell方程式から電磁波(電波)というものが理論的に導き出され、テレビ/ラジオ/携帯電話/無線LANなどの今日の無線通信工学が切り拓かれてきました。

電気と磁気現象は最終的に、マクスウェル (Maxwell)方程式でまとめられます。動画では、その源流の一つであるビオ・サバールの法則により、コイルに電流 Iをある向きに流したときに、磁界 B (磁束密度)がどの向きに作られるか (右ネジの法則に従う)を説明しています。
実際に作ったトロイダルコイルです(教員作)。赤いトロイダルコア磁性体を導線で締め上げながら巻いて縫っていきます。20分くらいで作れます。

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[3年] [情報処理分野]:パソコンの分解実験を通じて,コンピュータの仕組みを勉強します。

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[3年] [情報処理分野]:プログラミングの実験で画像処理を学びます。

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